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  「重症者リハビリ切り捨て」問題で国を再び提訴


今改定で導入された回復期リハビリ「自宅等退院率」の要件を問題視 
 

 回復期リハビリテーション病棟入院料への「成功報酬」の導入は、重症者リハビリの制限につながるとして、鶴巻温泉病院(神奈川県秦野市)に勤務する医師、澤田石順氏は4月11日、国を相手取り、通知の差し止めを求めて行政訴訟を起した。

 この「成功報酬」は今回の診療報酬改定で導入されたもので、「自宅等の退院率が6割」以上か否かで点数が異なる。澤田石氏は3月18日にも、同じく今改定によるハビリの算定日数の制限を問題視して、厚生労働省の通知の差し止めを求めて提訴しているが(医師が国を訴える、「改定に異議あり」)、今回はそれに続く第二弾の訴訟だ。
 
 「自宅等退院率の基準は、『質の評価』という名目で導入されたが、重症者と軽症者では、この率は全く異なる。にもかかわらず、これらを合算して指標としているため、自宅等退院率が低い重症者の入院制限につながりかねない」。澤田石氏はこう述べ、強く問題視する。リハビリの入院制限は、 療養担当規則20条6号(リハビリの医学上の必要性)や憲法25条(生存権の保障)などの各種法令に違反するとしている。

 自宅等退院率6割以上」で点数が2段階の設定に
 
 今改定では、回復期リハビリテーション病棟入院料が「自宅退院率」を指標に、以下のように二段階に分けられた。
 
 ・ 回復期リハビリテーション病棟入院料1 1690点(1日当たり)
 ・ 回復期リハビリテーション病棟入院料2 1595点(1日当たり)

 「入院料1」を算定できるのは、「退院患者のうち他の保険医療機関への転院した者等を除く者の割合が6割以上」の施設だ。澤田石氏の指摘の通り、これは「質の評価」という観点から導入されたもの。診療報酬に成功報酬的な要素を入れたことから、今改定の注目点の一つとされている。    

 回復期リハビリ病棟の入院患者の重症度に関する統計データは乏しいが、鶴巻温泉病院では澤田石氏の経験に基づけば、後期高齢者に当たる75歳以上と75歳未満では異なるという。自宅等退院率は、75歳以上の場合、軽症者(看護必要度B項目で0〜9点)では約80%、重症者(看護必要度B項目で10点以上)では30%強。一方、75歳未満では、軽症者で約9割、重症者では約5割と高い。
 
 「重症者切り捨て」を懸念して、改定の通知では「1割5分以上は重症者を入れること」という要件も設けられている。さらに、「自宅等退院率」の計算方法が改定直前の3月28日になって変更され、「死亡および急性増悪による転院を含めない」という通知が出された。これは要件の緩和につながるもので、これにより鶴巻温泉病院では「6割」を上回ることが可能になった。それでも、「そもそも通知で、こうした規定をするという方法自体が問題であり、事の本質は変わらない。いったん数字目標が入ったら、いくらでも勝手に変更することができる。3月28日の通知で、かえって私自身の道義的な問題意識は強まった」(澤田石氏)。
 
 前回の提訴では全国から多数の支援の声
 
 3月18日の行政訴訟については、それ以降、裁判所などからの動きは何もないという。しかし、リハビリ関係者にかかわらず、様々な立場の方から支援の声が寄せられている。新たな医師の全国的な組織、「全国医師連盟設立準備委員会」でも、支援活動を開始した(詳細は、ホームページを参照)。

 「裁判は時間がかかるもの。政治家や患者団体などへの働きかけを行い、次の展開を進めていきたい」と澤田石氏。澤田石氏自身は、リハビリの改定関連での提訴は今回で一区切りが付いたという。「リハビリ関係以外にも、後期高齢者の入院料や外来の点数などの問題があるはず。これらは関係する先生方が提訴を考えてほしい」と澤田石氏は呼びかけている。

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