街場の現代思想
- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/04/10
- メディア: 文庫
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p.13
「「教養」というのは、「生」の知識や情報のことではない。そうではなくて、知識や情報を整序したり、統御したり、操作したりする「仕方」のことである。
絵画的な比喩を使って言えば、「教養」とは、「古今東西のすべての知識」を網羅した大きな図書館があった場合(中略)、自分の持っている知識や情報が、その巨大な図書館の、どの棟の、どの階の、どんな分類項目名をつけられて、どんな本と並んで置いてあるかを想像することのできる能力のことである。
(中略)
この図書館の比喩を踏まえて、もっと正確に言えば、「教養」とは「自分が何を知らないかについて知っている」、すなわち「自分の無知についての知識」のことなのである。」
p.90
「難問とは、いくつも答えがあって、そのどれもが正解であるような問いのことだ。」
p.93
「「交換」というのはコミュニケーションのことだ。「ことば」を交換すれば、それは言語活動になる。「女」を交換すれば、それは親族組織になる。「財貨サービス」を交換すれば、それは経済活動になるになる。人間とほかの動物を区別する標識は人間がこの三つの水準で交換を行うということであり、ただそれだけだ。ことばを交わし、愛を交わし、お金をやりとりするもの。それが「人間」の定義である」
p.94
「私が何ものであるかは、私が作り出したもの、それが社会的ネットワークにおいて持つ意味と価値によって決まる。」
p.113
「質の高い仕事をする人間にはいくつかの種類がある。
「面白そうだったから」とか「暇だったから」とか「頼まれたから」とか「人生意気に感じたから」というような、どうでもいいような理由で仕事をする人間、ふつうこういう人たちがいちばん「質のよい仕事」をする。」
p.126
「勘違いしている人が多いので、ここできっちり申し上げておきたいが、知性というのは「自分の愚かさ」に他人に指摘されるより先に気づく能力のことであって、自分の正しさをいついかなる場合でも言い立てる能力のことではない。」
p.158
「たいせつなことなので、繰り返すが、人間を人間たらしめている決定的な資質とは「他者と共生する能力」である。」
p.173
「未来は、わが身にその未来が到達するさまをありありと想像できる人間のもとに選択的に訪れる。」
p.175
「目的地にたどり着くまでの道順を繰り返し想像し、その道を当たり前のように歩んでゆく自分の姿をはっきりと想像できる人間は、かなり高い確率でその目的地にたどりつくことができる。」
p.225
「倫理的でない人間というのは、「全員が自分みたいな人間ばかりになった社会」の風景を想像できない人間のことである。」
p.243
「それは、自分がどういうふうに老い、どういうふうに病み衰え、どんな場所で、どんな死にざまを示すことになるのか、それについて繰り返し想像することである。」